原位置水蒸気ストリッピング(DUS)による土壌・地下水の有機塩素系化合物汚染の修復
トリクロロエチレン・テトラクロロエチレンなどの有機塩素系化合物による土壌・地下水汚染の浄化修復手法として、現在までに地下水揚水法、ガス吸引法、バイオレメディエーション、透過反応壁法など様々な手法が提案されてきました。これらの手法には利点もありますが、一般的に浄化に長期間を要するという欠点があります。
そういった中、浄化期間を大幅に短縮しうる手法として原位置水蒸気ストリッピング(DUS:Dynamic Underground Stripping)が注目されています。DUSは、水蒸気の熱と土壌に電流を流すことにより発生する熱により、地下水揚水法等の手法では移動させにくい有機塩素系化合物を容易に移動もしくは蒸発させ、吸引井戸から短期間で汚染物質を回収します。


ERTイメージ

DUSでは、以下の3つの技術が融合することにより効率的な浄化を実現します。
(1)水蒸気注入用の井戸から、水蒸気を土壌や地下水中に吹き込み、土壌および地下水を加熱します。熱せられることにより移動しやすくなった有機塩素系化合物は、回収用の井戸から液体や気体の状態で回収されます。
(2)水蒸気の透過性が低い粘土層などには、電流を流して電気抵抗による熱を発生させ、その熱により透過性が低い層中の塩素系有機化合物を揮発させます。揮発物は吸引用の井戸から除去されます。
(3)水蒸気や電気抵抗による熱を使用する本手法においては、地中の温度変化や水蒸気の流れをリアルタイムに把握する事が不可欠です。そのため、電気抵抗トモグラフィー(ERT)を使用し、ほぼリアルタイムに地中の状況を把握します。

DUSシステム
次に、具体的にDUSが従来の処理法に比べどの程度効率の良い浄化を期待できるかあるサイトの例をご紹介します。このサイトでは、地下水の浄化にDUSを使用した場合、地下水揚水法(P&T)の約60分の1の期間で浄化が可能であることが明らかになっております。また、地下水揚水法とDUSのコスト比較をした場合、装置の設置コストはDUSの方が高くなりますが、圧倒的に修復に要する時間が短くなるため、総コストでは、DUSの方がかなり安くなることも同時に実証されています。
浄化法の違いによる浄化期間・浄化コストの比較例